生産者にとって収穫作業は、作物の品質を左右する大事な作業である一方で、負担が大きい作業でもあります。出荷のピーク時には、作業が早朝から始まり深夜に及ぶことも少なくありません。過酷な労働環境から若い担い手が不足し、国内では生産者の高齢化が著しくなり、生産者数は減少の一途をたどっています。
今まで築き上げてきたブランドを継承できるように、収穫用の農業ロボット・収穫機を導入して収穫作業の省力化を図ってみませんか。
キャベツは稲作などと比較して、単位面積当たりの労働力が多い作物です。従事者の不足、高齢化に悩むキャベツ農家も少なくありませんが、新たな労働力の確保は大変難しい課題となっています。
しかし、キャベツ収穫ロボットを採用すれば、キャベツの姿勢を整えながら把持してからカットするため、短期間で大量の収穫も可能です。運転手1人、選別2人の合計3人という少人数のチームで、畑の植えでコンテナ詰めまでを完了することもできます。
クボタのほうれんそう収穫機「SPH400」は、立ったまま収穫機を前に押し歩くことでほうれんそうの根を切断し、ベルトで機体上部へ搬送するタイプの収穫機です。4条同時に収穫ができるため、手作業より格段に作業効率がアップします。
また広洋エンジニアリングの「乗用型ほうれんそう栽培システム」は、運転台に乗って操作ができ、収穫だけでなくリンクの着脱によって播種や防除にも使える汎用性の高い収穫機です。
重量があり深くまで土に埋まっているだいこんの収穫は、重労働です。ヤンマーの「HD1250・HD1400」は、コンパクトながら掘り出し、茎葉の切断、コンテナへの積み込みまで可能。収容スタイルに合わせて仕様も選ぶことができます。
また井関農機の「VHD1250・1400-R」は、抜取りミスを防ぎながらだいこんの収穫ができます。横列には作業者2人が乗れる長い選別コンベアがあり、走行速度とは別の速度に調節ができます。
たまねぎは根切りや葉切りという、手間の多い収穫作業です。ヤンマーの「HT20A」は、2条ずつ往復して4条のたまねぎを収穫できます。掘ったたまねぎはきれいに整列してくれるので、その後の拾い上げ作業も楽です。葉切りカッターは無段階調節できるため、さまざまな出荷形態に対応できます。
クボタのBonitaシリーズは、歩行型の収穫機です。機種によって裸地にもマルチにも対応できるため、用途に応じて選びましょう。ためねぎピッカーやたまねぎコンベア、たまねぎピッカー追従運搬車との連携でさらに作業効率が上がります。
トマトは実が密着して房になっており、なっている方向も異なるため単純なロボットでの自動収穫が難しい野菜です。ヤンマーの開発事例では、2022国際ロボット展へ出展された大玉トマト収穫ロボットがあります。収穫対象のトマトを判断し、吸着切断ハンドによって、やわらかく掴みにくいトマトの収穫を実現しています。
また、Panasonicではすでに農家と連携した開発で稼働しており、農家が作成した色見本によって収穫に適した実を選別し、リングを使って手でもぐのに近い収穫を実現しています。
アスパラガスは生長が早い野菜で、長くなりすぎても出荷できなくなります。そのため収穫が忙しく重労働となるので、収穫ロボットの開発が望まれています。自動野菜収穫ロボットを中心に農業経営の課題解決を目指すinahoは、「RaaSアスパラガス収穫ロボット」を開発。スマホから操作できる無人の収穫機で、夜間でも走行可能な収穫ロボットです。
また、県の農産物としてブランド化したい長崎県では、工業技術センターによって試作を行いながら収穫実験が行われています。
ねぎは市場によって根付きで収穫する場合と、地上部だけを刈り取る場合があります。ヤンマーの「HL10」は、根付きで収穫するタイプで、うね崩し、堀取り、搬送、土落とし、集束・結束までをすべて1台で行えます。
ニシザワの「NPSH-4」は、葉ねぎの地上部だけを刈り取って収納する収穫機です。地上部だけを刈り取ると、また伸びた部分を収穫するので収穫サイクルが早くなります。収穫スピードをアップさせ、労働時間を大幅に短縮でき、手刈り作業より格段に早く作業を終わらせることができます。
重量があり大きい野菜であるはくさいは、収穫に大変な労力が必要です。ヤンマーの「HH1400」は、はくさいを傷つけずに収穫しながら、選別・調製をすることができます。運転手以外に、補助者もコンテナ台に乗ったまま作業ができ、腰を屈めない楽な姿勢で行えます。
農研機構によって開発された「自走式はくさい収穫機」は、ゴムクローラーで走行し、円板刃ではくさいの茎葉部を切断します。その後ゴムベルトで機体上部へ運び、作業者によって切り直しや段ボール又はコンテナ詰めを行います。作業者は歩きながらの作業となりますが、腰を屈める必要はありません。
テクノロジーで農業課題をソリューションするアグリストが開発した「ピーマン収穫ロボットL」は、ハウス内に設置したワイヤーの上を移動する、吊り下げ式のロボットです。地面の状態や障害物などでロボットが動かなくなる問題も解決しつつ、農家の慢性的な人手不足を解消しました。
「高知工科大学」では、ピーマン収穫ロボット開発の論文が発表されており、ピーマンの収穫時期を判別するためのカメラ、刈り取るための方法を主に試行錯誤しています。まだ開発途上ではありますが、今後も実用化に向けて開発を続けていくようです。
「MCBH11」は、収穫から豆さやの選別まで行える収穫機。小回りの利く設計かつ油圧駆動で、軟弱圃場での稼働も可能です。作業能率が10a/hで、手摘みよりも早く収穫作業が進められます。続いて「GTH-1型」は、株を引き抜かずに豆さやのみ収穫するロボットです。トラクターに取り付けられるタイプで価格を抑えられます。
最後に「HE10A」は、株元ごと引き抜くタイプで、土落としから収束までを一台で対応できます。カバーが容易に外せるため、収穫後のメンテンナンスが簡単です。
「野菜作業車NC14・NC16A・NC17」は、うねをまたいで走行できる作業車。レタスの運搬に利用できます。続いて「クローラ型高床作業車 楽畝」も、クローラータイプのうねをまたぐ運搬作業車です。低速で前進するため、収穫速度に合わせた移動ができます。
アイ・ディー・エスと英国の研究チームが現在開発中の収穫ロボットは、レタスの茎を切断して外葉を取り去る作業を自動化できるロボットです。収穫作業を自動化できるロボットで、収穫作業時間を短縮できます。
「HB1250」は、1条刈り対応の収穫機です。ブロッコリーを挟んで回転歯が茎を切断し、上葉を羽根付きカッターで取り除きます。作業能率が3~6h/10aで、手作業でブロッコリーの体裁を整えるよりも時間を短縮できます。
また、ブロッコリーによる詰まりが発生した際には切り替えスイッチで逆回転させられるため、すぐに詰まりを解消することが可能です。操作が簡単なため、熟練技術がなくとも収穫作業を進められます。
ディースピリットが現在ミカン収穫ロボットを開発中です。急傾斜に対応できるよう開発が進められており、近い将来に実用化される予定となっています。アーム先端に3種類のカメラがあり、みかんの距離・位置・色づきを判定。AIが熟度を判定して収穫作業を進めます。
また、触覚センサーが搭載されるので、茎の位置や角度を捉えてカット。1つ1つの茎の状態に合わせて収穫が可能です。シンプルな機構が採用されているため、従来のロボットと異なり販売価格は抑えられる予定です。
農研機構・立命館大学・デンソーが果実収穫ロボットを現在共同開発中です。自走式の車両にけん引された2本のロボットアームが果実を収穫します。ディープランニングで熟度を判定し、人と同じ速度で収穫を行うため、作物の質が低下する心配が少なくなります。
また、収穫時にコンテナが一杯になると、空コンテナに自動交換する機能も搭載。1個あたり11秒のペースで収穫を行います。2020年12月時点でプロトタイプが開発されていますが、販売時期は未定となっています。
ヤマハ発動機は、現在「タフネスアーム」を開発中です。炎天下や降雨といった厳しい環境かでも稼働できるロボットアームで、-10℃から55℃でも収穫作業が行えます。
自動ぶどう収穫ロボットとして、実証実験が進められています。ぶどうをAIが判定し、6軸アームでかごに収穫します。開発途中のため販売時期や価格は未定です。
「ロボつみ」はカーボンファイバーのハサミで、いちごを傷つけずに収穫するロボット。AIが色づきを判断し、適した熟度のいちごを収穫します。通路幅900mmに合わせて設計されており、玉受けネットがある品種にも対応可能。アームが斜め上からヘタを挟んで、実に触れずに収穫作業を進められます。
続いて、「イチゴ収穫ロボット」は、色味具合の判定を各農家で設定できる収穫ロボットです。満杯になると自動で次のトレーに交換するため、有人監視が必要ありません。
「Arm-I」は毎秒0.3mで自動走行し、くりを収穫するロボット。パラレルリンクロボットなので、出力がアーム先端部に集中し、カメラでとらえた栗を高速で拾い上げます。先端部のグリッパーは他の形状に変えることができ、くり以外の作物も収穫可能。
スプレーノズルを取り付ければ農薬散布もできるため、一台で何役もこなします。関節ごとに動かすシリアルリンクメカニズムよりも構造がシンプルなため、販売価格が抑えられています。